太陽がビルの隙間に身を隠し、ネオンの泡が闇に浮き上がる。
地上100メートルから見下ろす街は、夜を迎える準備の最中。
きゅん・と足元で鳴く愛犬を抱こうと、手にしたグラスを床に置いた。
「定春、お腹すいたカ?・・・金時。起きロ」
チャイナドレスの裾をはためかせてベッドの端に腰掛けると、少々乱暴に金色の髪を殴る。
裸でシーツに包まった男は、筋肉質の胸をあらわにしたまま動こうともしない。
「定春、コイツ食べるカ?」
「・・・冗談やめてくれ。本気で食うだろ?ソイツ」
欠伸交じりで講義した声は、まだ眠りに片足を突っ込んだままだ。
「オマエなんか食ったら、定春が金髪になっちゃうヨ」
「その金髪を昨日食った御方が何を仰います」
「殺されたいカ?」
きらり、と高価な宝石にも似た瞳が光る。
今度は冗談ではない。
金時は誤魔化し半分で笑い、金と時間を惜しげなく使って手入れされた肌を指で撫でた。
「はい、食ったのはこちらですねぇー」
「てめーなんぞに食われた覚えはないヨ」
「あれ?じゃあ昨夜のことは夢?」
つつーぅ、と滑らせた指が、スリットから覗く太ももで止まる。
うっすらと残る赤い跡は、昨夜金時がつけたはず。
「あんなモン、食われたウチに入らないネ」
「ご不満でも?女王様」
意図を持ってチャイナドレスの上を這う手。
神楽はその手を払い、金時の顎を優雅に掴んだ。
「女王じゃない、工場長。・・・新八とおそろいの顎になりたいカ?」
「いやいやいや。金髪でケツアゴって、キャラとしてくどくねーか?」
すんすんと鼻を鳴らす定春をベッドから降ろすと、神楽はシーツに足を突っ込んだ。
絡ませる足と低体温。
「活動開始時間ダロ」
「ま、夜はこれから長いしな」
「・・・短いよ。夜も街も、人も。華やかなのは一瞬ネ」
さらりと解けた桃色の髪に、唇を落とす。
ベッドが大きく軋む。
まだまだ、夜はこれから。